2011年1月6日木曜日

近藤誠本

自分が学生の頃、慶応放射線科の近藤誠医師の「患者よ、がんと闘うな」という本を読みいろいろな意味で興味を持った。

つい最近の文藝春秋にも氏の記事があり、さっそく買って読んでみたのだが、実は氏の主張の集大成となる本が出版されていたのでさっそく併せて読んでみた。



Overstatementと思える箇所もあるが納得できるところも多いし、医者である自分の目からみても、全体的には、ことの本質を言い当てていると思う。

残念なのは(それは氏自身が意図して行ったことだが)、一連の氏の主張が主に一般市民向けの書籍を介して世に発信されたことか。

氏の主張の真偽を吟味するには、長年にわたる実臨床経験や、医療統計やがん研究に関する知識などが要求され、高度な医学経験と知識を有する医者でさへ、じっくり対峙しなければ氏の主張は理解できず、まして、医学の素人にはとうていその本質を理解することなどできない。善意で警鐘を鳴らしたつもりが、逆に医学に素人の患者に心理的動揺を与える危険性がある。やはり、一石を投じるべきは医学界であって、一般社会ではなかったのではないか。

一方で、議論すべき相手である専門の医師集団が、頭ごなしに異端児として氏を排除しようとしてきたのも残念だ。
あくまでもscientificに議論すれば、彼の一連の著作を通じて、医療界がんという病気を原点から見直すいい機会になったのにと思う。

いずれにせよ、自分にとっては面白い本であった。